網入りガラスの修理について
網入りガラスには遮炎性があり、火災時にガラスの割れ落ちを防止して炎の燃え広がりを防ぐ効果があります。
そのため、防火地域や準防火地域などの建物では、防火設備として窓やドアなど開口部で使用しなければなりません。
特にアパートやマンションなど集合住宅では延焼リスクが高いため、ベランダの掃き出し窓などでの使用率は高くなっています。
住宅のほか公共施設や大型施設などでも幅広く使用される網入りガラスですが、経年劣化や使用状況によっては自然に割れてしまう可能性がございます。
もし賃貸物件で網入りガラスが勝手に割れてしまった場合の原因と、修理費用の負担は誰になるのか等を解説いたします。
網入りガラスが勝手に割れる原因と対処法
ガラスの中にワイヤーが封入されている網入りガラスは、構造上自然破損が発生しやすい性質です。
主な破損原因は経年劣化や使用方法の誤りとなります。
熱割れ
熱割れは日射や暖房器具の影響によりガラスの温度が上昇した際、高温な部分と低温な部分の膨張率の差によって生じる自然現象によるガラスの破損です。
フロートガラスでは高温になって膨張した中央部分とサッシに埋め込まれた低温な部分との温度差が原因となります。
網入りガラスはガラス自身の温度差に加え、金属の網が熱を吸収しやすいためガラスの温度が上昇しやすく、更に網の熱膨張率がガラスと異なるため熱割れが発生しやすい性質なのです。
また、遮蔽物によって日射が窓に反射すると熱が逃げ場を失い、ガラスと遮蔽物の間に熱がこもるため熱割れが起きやすくなります。
熱割れを防止するには
ガラスに熱をこもらせないことが重要です。
基本的な対策は、家具やカーテンなどを極端に網入りガラスに近付けて配置しない、ガラス面に目隠し用の色付きフィルムや段ボールや紙を貼らないということです。
また、冷暖房の影響でガラスが冷える・温まると熱割れを起こすこともあるため、エアコンの風やヒーターの放射熱が網入りガラスに直接当たらないようにしましょう。
錆割れ
錆割れは網入りガラス特有の自然破損で、ガラス内部のワイヤーが錆びて膨らみガラスを圧迫することが原因で発生します。
通常は網が錆びないようガラスの切断面には防錆処理が施されていますが、ガラス周囲のパッキンの経年劣化や防腐剤の劣化により、雨水や結露水が切断面から網に伝わって錆が発生してしまうのです。
錆割れを防止するには
雨水や結露水などがガラスの切断面に入り込まないよう、枠のパッキンに水滴がついていたらこまめにふき取るようにしましょう。
熱割れと錆割れの特徴、通常のガラス破損との見分け方
熱割れと錆割れの特徴
熱割れや錆割れによって網入りガラスが割れると、ガラスの端から中心に向かって亀裂が入ることがほとんどです。
ヒビの数は1~3本程度と少ないのが特徴です。
ゆっくり割れるため亀裂の形はゆるやかに屈折していたり、S字になる場合もあります。
通常のひび割れの特徴
物がぶつかった、ぶつけてしまった場合は、物が衝突した場所を中心に放射状にヒビが入ります。
蜘蛛の巣上に亀裂が入っている場合は何かがぶつかったことが原因で、亀裂の形は真っ直ぐです。
賃貸物件で網入りガラスが割れたら
基本的に修理費用は貸主が負担
国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の中に、網入りガラスの亀裂についての記述があります。
賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生すると考えられるものという区分において、構造により自然に発生した網入りガラスの亀裂については「ガラスの加工処理の問題で亀裂が自然に発生した場合は、賃借人には責任はないと考えられる。」とされています。
つまり網入りガラスの破損原因が、「故意ではなく熱割れや錆割れ等による自然現象」であれば、修理費用は貸主側の負担になるということです。
ただし、熱割れや錆割れによるひび割れであっても、破損を知りながら放置し使い続けたせいで破損部位が拡大してしまった・ガラスが割れ落ちたなどの場合は借主側の負担となる可能性があります。
いずれにせよ、ヒビが入った網入りガラスは破損部位が広がり割れ落ちてしまうまであっという間ですので、放置すると大変危険です。
風雨が部屋に入り込む、泥棒や空き巣被害に遭うなどの二次被害が起こる可能性も十分ありますので、マンションやアパートなどの賃貸物件で熱割れや錆割れを発見したらすぐ管理会社やオーナー様、大家さんへ連絡して早急に対応してもらうことをおすすめします。
借主負担になる場合
ガラスの破損原因が故意によるもの、また通常の使用範囲を超えるような使用による損耗の場合は賃借人が修繕費用を負担します。
また、上記でも触れましたが熱割れや錆割れによるガラスの破損でも、放置してヒビが広がった・ガラスが割れ落ちたなどのケースでは借主負担となる場合もあります。
おすすめは熱割れや錆割れの心配が無い「ワイヤレス防火ガラス」
網の無い透明な耐熱強化ガラスなら、熱割れや錆割れの心配がありません。
熱処理によって強化ガラスと同等の強度があり、認定サッシと組み合わせた製品は防火設備として使用することができます。
ガラスの三大メーカーであるAGC(旧旭硝子)、セントラル硝子、日本板硝子からそれぞれ網無し防火ガラスが発売されています。
網入りガラス以外が割れた場合は?
透明な板ガラスやペアガラスなどが割れてしまった場合、ご加入の火災保険から修理費用が支払われる可能性があります。
詳しくはガラス修理と保険についてのページをご覧ください。